深刻化する空き家問題の元凶

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人口減少で社会的課題とされている空き家問題。国土から人が減るのだから、当然、住まいにも空きが大量に発生する。たかが空き家、誰にも迷惑はかけていない――。ところが、空き家は腐ったミカンのように周囲に悪影響を及ぼし、じわじわとコミュニティを蝕んでいく。もちろん所有者にも負担を与える。

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総務省の土地統計調査で、空き家の利用状況を調査している。それによると、人が住んでいない家の利用状況は、昼間だけ利用するなど、寝泊り以外が15.1%、週末や休暇時に使用が19.1%、残業で遅くなった時などたまに寝泊りが1.1%、その他が5.4%。時間や時期によっては利用する、これら“準空き家”は合わせて40.7%となっている。

物置にしているは17.1%、転勤・入院などで長期不在の空き家は5.1%、取り壊し予定の空き家も5.1%、その他の利用していない空き家は14.7%で、いわゆる空き家は計42%。また、売却用、賃貸用の空き家は計11.0%となっている。

これらを建築時期別にみると、昭和56年以降建築のものでは、“準空き家”の割合が多く、昭和25年以前ではいわゆる空き家の割合が多く、54.1%に及ぶ。このこのことが示すのは、古い家ほどほこりをかぶりやすい状況にある。つまり、放置される傾向が強いということだ。

空き家にしている理由ベスト3

古いほど所有者が高齢の可能性が高く、亡くなっている場合にはご子息が引き継いでいるケースも多いだろう。そうなると、いくつかの問題が発生する。ご子息が移り住む場合には、当然修繕が必要になる。すでに持ち家があれば、相続問題が浮上する。どちらにしても厄介で、結果、古い家は放置され、空き家として寂しくたたずむことになる。

実際、同調査で空き家にしておく理由を質問している。それによると、最も多かったのは、「物置として必要だから」(44.9%)、次いで「解体費用をかけたくないから」(39.9%)、「特に困っていないから」(37.7%)。この結果から透けて見えるのは、「手元にはおいておきたいが、あくまでも一応」という心理だ。もしかするといい値段で売れるかもしれない、でもそれまでの維持費はかけたくない…。「いつか売ろう」と思いながら押し入れにしまい込んでいる一張羅と同様の扱い。つまり、市場に出る可能性は極めて低いということだ。

こうして、日本に空き家がじわじわと増えていくと、社会は徐々に蝕まれていくことになる。空き家増加による治安の悪化、劣化による崩壊、倒壊リスク上昇による、エリアの安全性低下…など、まさに病原菌のように空き家は、地域を、そして社会を劣化させていき、誰も幸福にしない結末をもたらしかねないのだ。

空き家問題に政府があの手この手の施策を投入するのはそうしたことが背景にある。たかが空き家と思ったら甘い。単なる自己責任では済まされない社会的責任もある。例えば、相続放棄をしたとしても、新たに相続人となった人が相続財産の管理を始められるまでは、自己の財産と同一の注意をもってその財産の管理を継続しなければならない、と民法に定められている。老朽貸家が倒壊し、他人に被害を生じたた場合には、その所有者は、その損害を賠償する責任を負う、など、決して無関係ではいられないのだ。

もっとも、なぜこんなことになったのかを振り返れば、無尽蔵に住宅を作り続けていることがその元凶であることは言うまでもない。人口が減少しているのになお、新築住宅が建て続けられている…。物件がダブつくのは当然だ。1世帯1住居となったことで、収入における居住費の増大も間接的に国民の幸福度を低下させている。そう考えれば、住宅産業が根本から戦略転換もしていく。そこまでしないと今後も空き家は増え続け、その結果、社会が劣化し、日本の国力自体も低下しかねないだろう。




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