北海道・札幌で発生した爆破事件。建物2件が吹き飛ぶその衝撃のすさまじさから、様々な憶測が飛び交いました 。ところが、事件の詳細が明らかになるにつれ、思わぬ事実が判明します。なんと、爆発の原因は、密閉状態の部屋でスプレー缶を100本以上噴射。それに給湯器着火の際の火が引火したことでした。

だれが何のために…。行っていたのは不動産会社の社員。スプレー缶は、消臭・抗菌用のもの。実は、スプレーはその不動産会社が賃貸物件の部屋のクリーニング用に使用するためのものでした。なぜ、空噴射していたのか。退去時清掃の代金を徴収しながら、実際には何もせず、スプレーだけが残っていたからです。売上計上しているのに、スプレーだけが残っていては帳簿が合いません。だから、社員は必死で“証拠隠滅”していたわけです。
もっとも、なぜ「クリーニングする」といって、やらなかったのでしょう。理由として、忙しくて忘れていたなどの声が上がっています。その真偽はともかく、残念ながらこうした退去時清掃代名目の費用を徴収しながら、それに見合ったことをしている不動産がいないとは言い切れない実態があります。
要因はいくつかあります。ひとつは、この事件を起こした不動産会社のように、直で管理等も請け負っている場合、ごまかしやすくなる事が挙げられます。どういうことかというと、掃除を自社社員でやる、つまり、誰もチェックすることがない状況が生まれるのです。そうなると、「忘れていた」としても、やったことにして、スプレーを空吹かしでもしておけば、済んでしまうわけです。
もうひとつは、居住者がクリーニングに立ち会うことがない、ということです。これは上記にも関連しますが、契約を終え物件を出る住人は、それなりに部屋を汚した自覚もあるでしょうから、㎡あたり2,000円前後が相場といわれる清掃代は疑うこともなく支払ってしまいます。そして、もう出ていくわけですから、わざわざ掃除の現場に立ち会うこともありません。あえていえば、業者を信用しているともいえるでしょう。
さらに補足すれば、クリーニングといいながら、スプレーだけで済ますのは杜撰な気もしますが、実際にはそれほど汚れていない場合も少なくないのです。こうしてみると、不動産側にとって、退去時清掃代金は、非常においしい収益源といえるのです。一軒当たりは少額ですが、着実に徴収できれば、結構な収入になります。問題の店舗も年間100万円弱の収入があったといわれています。それゆえに、100本以上もの空吹かしが必要になったわけです。
事件を起こした某ア●マンでは過酷なノルマがあったといいます。そこで、オプションであるクリーニング代をせっせと獲得したはいいものの、それに対応するだけの人員がいるわけでもなく、証言にあったように忘れてしまうこともあったのでしょう。そう考えると、少々気の毒な側面もあります。
では、こうした事態を回避するにはどうすればいいのでしょうか。まず業者側は、案件数と人員のバランスにもよりますが、クリーニングを外注すべきでしょう。不動産の社員は細かい雑用を多く抱えており、そこに掃除の時間も入ってくるとなると確実に業務過多となります。利益は減りますが、社員の健全な労働環境の確保を考えてもそこは妥協すべきではないでしょう。過剰なノルマももちろんなくすべきです。
一方、部屋を借りる側は、まず本当に清掃代が必要なのかしっかり考えることです。住んでいた側にすれば、汚したと思う部分もあるでしょう。しかし、あくまでオプション(実際には必須の仕様)ですから、自分の目でみて、あえてクリーニングする必要があるかを判断してからでも全然問題ないはずです。その上で、クリーニングの現場にも立ち会う。おカネを払う以上、それくらいの姿勢でいるべきです。

そして当たり前のことですが、借りた部屋はきれいに使う。このことをしっかりと意識すべきです。借りものだからと、傷みや汚れを意識せずに荒く使う住人もいますが、発想が逆です。借りものだからこそ、きれいに使う。これが次に使う人もいる賃貸物件に住む人のマナーです。そこに後ろめたさがあるから、清掃代も「仕方ないかな」と払ってしまっているのではないかと、思ってしまいます。
昨今は、敷金・礼金ゼロなど、借りる側に有利に思える条件が提示されることも珍しくありません。しかし、クリーニング代というオプション(実質は必須)があるように、その分を業者はどこかで回収する必要があります。こうしたからくりもしっかりと頭に入れ、借りる側は業者と向き合う。そうした姿勢が、業界を健全化させ、結果的に借りる側も損をしない構造へと業界を浄化する力になっていくはずです。
