見晴らし抜群の“危険区域”に住むのは賢明か愚かな決断か

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眺望抜群の急傾斜地崩壊危険区域に住むメリット

360度見晴らせる。豊かな緑に囲まれ吹き抜ける風。眺望のいい場所に住むと心が洗われるようで、快適さが倍増しますよね。実際、そうしたニーズは少なくなく、高台への住居建設が止まることはありません。

高台と一口に言ってもその種類は様々です。山の斜面もれば、小高い丘の上、山を切り開いた分譲地もあります。共通するのは傾斜地の上に立っているということです。問題は、傾斜の角度です。行政では、「急傾斜の崩壊による災害の防止に関する法律」で傾斜度が30度以上の土地を「急傾斜地」と定義しています。

わざわざ定義しているのは、急傾斜地は「危険」だからです。もちろん、十分に崩壊リスクに配慮し、建設していれば問題はないのですが、それでも災害発生時に平地よりも危険度が高いことは否定できません。急傾斜地で高さが5メートル以上の特に危険な区域はその周辺も含め3段階に設定され、それぞれ「土砂災害警戒区域」、「急傾斜地崩壊危険箇所」、「急傾斜地崩壊危険区域」に指定されています。

危険区域に住むうえで必要なこと

実際に居住を検討する際に最も関係があるのは、「急傾斜地崩壊危険区域」でしょう。この区域は、<急傾斜地の崩壊により危害が生ずるおそれのある人家が5戸以上ある、または5戸未満であっても官公署、学校、病院、旅館等に危害が生ずるおそれがある区域>と定義されています。その名の通り、この区域に立っている住居は、崩壊の危険を感じる場合が少なくありません。

まさに360度見晴らせ、抜群の眺望ではあるのですが、土地はコンクリートで養生された壁面に囲われ、崖の上だったりします。晴天の日は気持ちの良さが上回り、ここにずっと住みたいと思わせてくれます。しかし、大雨でも降れば、いつ土砂が崩れだすか分かりません。抜群の眺望と引き換えに、土地の崩壊リスクもついてくるわけです。

もっとも、急傾斜地崩壊危険区域に指定されていても、住んではいけないというわけではありません。ただし、掘削や伐採などをする際には行政の許可が必要になります。そうしなければ、周辺に危害を及ぼす崩壊につながりかねないからです。「そういうことは気にならない」、という人もいるでしょうが、穏やかに過ごせる場所とはいえないでしょう。

アクセス面でも当然、坂が多く、体力がなければきついのは言うまでもありません。立地的に車が欲しいところですが、そもそも車が入れない場合が多く、駐車場は近隣で借りることになるのがほとんどなのも厳しいでしょう。現地を視察してみて、その眺望にほれ込み、賃貸や購入を決めた。そうだとしても冷静に考えればマイナス要素の多さに翻意する人も少なくないのではないでしょうか。

私が視察した神奈川県某所の「急傾斜地崩壊危険区域」は、横浜エリアを見晴らせる素晴らしい眺望で、庭も広く、バーベキューでもしたくなるような魅力的な物件でした。ただ、庭に大木が植わっていて、できれば伐採したいと思いました。隣家は傷みが激しく、廃屋化していました。これらは、自由に手を加えられない区域の制約が原因でしょう。それでも家賃は、比較的高めに設定されていました。

とはいえ、「急傾斜地崩壊危険区域」に住むことを否定するつもりはサラサラありません。眺望のよさは、本当に魅力的だからです。ただし、行政の人に話を聞いた時にこんなことを言っていました。「ニュースにはなっていないけど、危険区域で土砂崩れは頻繁に起こっている」。住居選びの基準は人それぞれですが、「危険」といわれるエリアにあえて住むなら、相当の覚悟を持っておく必要がある。そうでなければ、万一の際、後悔することは避けられないでしょう。

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